「1枚の絵をきっかけに 〜はじまることば・はじまる写真〜」オンラインギャラリー 



この度は、「1枚の絵をきっかけに 〜はじまることば・はじまる写真〜」オンラインギャラリーをご観覧いただき、ありがとうございます。このギャラリーは、障がいのある人たち、サポートする人たちが、日常の生活環境の中で広くアート活動に参加し、 創作物を簡易に発表できる場を作ることにより、アートを身近なものとして捉え、興味の高まりと共に鑑賞活動への参加が促進されるのではないかと考え開催しました。ご応募いただいた、ことば表現作品12点、写真表現作品13点を展示しております。作者一人一人の思いや見方を感じていただき、多様な鑑賞方法があることを知っていただくとともに、自分とは違う見え方や考え方を楽しんでいただければ幸いに思います。


【展覧会の主旨】

「作品には1000のことばがある」といわれます。これはもちろん、実際に1000個のことばがあるということではなく、一つの作品はいろいろな見方ができたり、たくさんの意味を生み出せたりするということです。
では、なぜこのように、作品から様々なことばが生まれてくるのでしょうか。いくつか理由はありますが、一つ挙げるとすれば、それは作品が誰に対しても開かれているためです。
例えば、今回お題となった絵画作品を幼稚園の子供が見たらどうでしょうか。また、異なる国の異なる文化の人達が作品を見たらどのようなとらえ方をするでしょうか。また、この絵が描かれた約130年前の人達と、21世紀を生きる私達ではどんな風に見え方が変わったり変わらなかったりするでしょうか。
作品は、年齢、国籍、文化、時代、そして、今回のように障害のある/ないにかかわらず、誰に対しても開かれ、そして自分なりの見方や感じ方を許してくれます。さらに、対話をすることで、一人ひとりが持っている感性や知性、そして、他の誰でもない、かけがえのないあなたの存在や魅力をみんなが知ることができます。
今回の展覧会では、広島県立美術館が所蔵する小林千古(こばやしせんこ)作、「ミルク・メイド」をお題とし、作品鑑賞を通して「ことば」と「写真」で表現する展覧会を企画しました。 今回お題となった作品の作者である小林千古は、広島県廿日市市出身の画家です。130年前に制作された作品と皆さんとの“あいだ”で、さまざまな物語が生まれることを期待しました。

※小林千古「ミルク・メイド」(1897年)は、広島県立美術館で開催中の「ウェルカムギャラリー」で展示されています。ぜひ、実物を鑑賞いただき、画面越しでは伝わらない魅力を味わってください。
ウェルカムギャラリー | 広島県立美術館 (hpam.jp)
(注)広島県の「まん延防止等重点措置」の適用に伴う新型コロナ感染拡大防止のための集中対策を受け、臨時休館をしている場合があります。ご来場の際は事前にホームページ等で開館の状況を確認ください。
※今回の展覧会に先立って、「ミルク・メイド」を用いた対話型鑑賞会「みんなで楽しむおしゃべり展覧会~君の見方で絵をみよう~」を実施しました。対話型鑑賞会とは、グループで行う鑑賞会で、一人ひとりが思ったことや感じたことを自由に語り合い、絵の解釈を創作していく活動です。鑑賞会の様子はYouTubeで公開されています。こちらも合わせてご覧ください。
2021年10月16日実施 アートを楽しもう「みんなで楽しむおしゃべり鑑賞会〜君の見方で絵をみよう〜」の様子 - YouTube

【ことば部門】

 障害がある方の中には、絵を描くことが好き(得意)な人、立体をつくることが好き(得意)な人、ダンスをすることが好き(得意)な人など、様々な好きや得意を持っている人がいます。その中には、ことばを使った表現が好き(得意)な人、そして普段使っていることばに魅力がある人もいます。その魅力とは、時折、「ぼそっ」と発される一言や、興味のある物事を生き生きと語ること、また、ある事物に対する独特の捉え方だったりします。また、空想のストーリーを考えることが好き(得意)な人もいるかもしれません。
 ただ、これまで障害のある人を対象にした展覧会では、ことばが扱われることはほとんどありませんでした。そのため、ことばの魅力を持つ人達がその力を発揮する場が十分に整えられて来なかったのではないかと思います。そこで、今回は作品「ミルク・メイド」を通して様々なことばが生まれ、紡がれることを期待しました。
 出品された作品は、詩やタイトル、語り口調を生かした作品、絵画から物語を創作した作品や自身の現状を置き換えたような語りなど、多彩なことばが集まりました。  ご覧いただく方はぜひ、一つの絵画作品をきっかけに生まれた、ことばが織りなす豊かな世界に浸っていただければと思います。

【写真部門】

写真は、撮影される人と撮影する人の共同で制作されます。シャッターを押せば即座に写真は撮影できますが、その瞬間に至るまで、そして撮影後には、制作に携わった人達みんなのアイデアや思いが織り込まれます。例えば、衣装はどうしようか、ポーズや表情はどうするか、どんな場面を想定するか、描かれた女性との関係をどうするか、画面のレイアウトをどう構成するかなど、撮影される人と撮影する人は一緒になって考えることになります。
今回写真部門で大切にしたいと考えたのは、このような皆さんどうし、そして絵画作品と皆さんとの“あいだ”で起こる出来事です。一人で絵や彫刻をつくる場合とはちがった、共同で何かを創り出す営みが生まれることを期待しました。
 出品いただいた写真作品には、絵といっしょにポーズをとる、衣装や背景をまねて絵になりきる、そして、絵の中に入り込んで新しい物語をつくるなど、多彩な表現がありました。また、今回は撮影時の様子をインタビューし、制作時の様子も伺いました。そこで語られるエピソードはたいへん興味深く、作品世界を豊かに広げてくれるものでした。 ご覧いただく方はぜひ、写真作品のみから感じ取れること、またエピソードと合わせて感じ取れることの両方を味わっていただければと思います。